効果的な単語の学習法5 〜意図的学習のポイント〜
単語の効果的な学習法、どんどん続いてまいります!
前回は、付随的学習のポイントをお伝えしました。
今回は、意図的学習をする際のポイントについて触れていきたいと思います^^
付随的学習と意図的学習とは何ぞや?
という方はこちらの記事をまず確認しましょう↓
効果的な単語の学習法3 〜意図的学習と付随的学習〜 - 国産バイリンガル製作所
意図的学習は、単語を覚えることを1番の目的とした活動で学習することで、単語帳やアプリを使っての語彙学習がこれにあたります。
語彙学習アプリとしては、iKnow!など記憶のメカニズムを取り入れて楽しく学べるものもあります。
今回は、学習したい単語や単語集がアプリになく、自分で本や単語カードなどを使って学習する際、何に気をつけたら効果的に単語が覚えられるかをお伝えします^^
意図的学習をする際に意識したいのは、以下3点です。
単語は繰り返し学習する
単語を長期的に覚えておきたければ、その単語を複数回学ぶことが必要です。
記憶には海馬が重要な役目を果たします。
海馬が必要と判断した情報は長期記憶に保存されて、長期的に覚えておくことができるのです^^
その判断基準は「生死に関わること」ですが、繰り返すことで「この情報は、生きていくのに大切なんだ」と判断し、その情報が記憶として定着します。
では、何回学習したら良いのか?
記憶力には個人差があるのですが、中田達也さんの研究によると、「5回」が提案されています。
その研究というのは、以下の通り。
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日本人の学習者に16個の英単語を1、3、5、7回のいずれかで学習してもらい、テストをしました。
学習には、コンピューター上の単語学習ソフトウェアを使用し、
テストは3回;直後、1週間後、4週間後に行われました。
そのテストの正答率を表したグラフがこちら。
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正答率は、5回と7回行なっても大きな差は見られません。
もちろん、回数が多ければそれに越したことはありませんが、より少ない回数でほぼ同じくらい覚えられるのであれば、効率を考えて5回を目安と見ても良いのではないでしょうか。
時間をおいて復習する
「単語は繰り返し学習する」と述べましたが、どのタイミングで復習すれば良いのか。
学習のスケジュールには、集中学習と分散学習に分けることができます。
集中学習→間を置かずに複数回繰り返す学習
分散学習→間隔をおいて複数回繰り返す学習
そして、長期的に覚えておきたいのであれば、分散学習の方が適しているということが、これまでの研究で示されています。
面白いのが、集中学習を行うと学習中であれば記憶したことを覚えているため、つい覚えた気になってしまうという点。
しかし、長期的にはその記憶を保持できません。
一方で分散学習の場合、学習中には記憶が集中学習ほど定着しないため効果がないように思えてしまいそうですが、実は長期的に覚えていられるのは、こちらの学習法だということ(笑)
なので、連続してすぐに単語を20個繰り返すよりも、時間を数分でも良いから置いて復習してみましょう!
(実験では、6分の時間をおいて繰り返し学習していましたが、分散学習の効果がしっかり現れていました)
どれくらい時間をおいて復習をすべきか気になる人は、
「どれくらいの期間、覚えていたいか」で学習スケジュールを考えましょう。
具体的な期間でいうと、覚えていたい期間の10〜30%くらいの期間をあけて復習をすると、情報の保持率が最も高いという説があります(e.g., Bird, 2010)
例えば、3週間後の試験までに覚えていたいのであれば、2.1日〜6.3日(21日×10〜30%)の間隔をあけて復習を繰り返すことが最も効果的、という計算になります。
覚えようとするより、テストする
近年の研究によって、テスト自体に学習効果があるということが分かっています。
アメリカのパデュー大学のジェフリー・カーピキ教授とワシントン大学のヘンリー・ロディガー教授によって行われた面白い研究があります。
アメリカの大学生が未知の40単語をコンピューター上で学習し、テストを受けました。
この研究の目的は「学習」と「テスト」が外国語の単語習得に与える影響を調査することでした。
「学習」の時には、chakula=foodのように、スワヒリ語の単語とその意味が画面に表示されます。
「テスト」と時には、chakula=???と表示され、スワヒリ語の単語の意味を入力することが求められました。
そして、学習とテストの回数を4パターンに分けて結果を比べました。
①学習2回、テスト2回
②学習4回、テスト2回
③学習2回、テスト4回
④学習4回、テスト4回
上記の通り学習とテストを行なった1週間後に、事後テストを行いました。
ここで、皆さんに質問です!
②と③は同じ回数だけ(6回)単語に出会っていますが、どちらの方が単語の意味を覚えていたのでしょうか?
違うのは、学習とテストのどちらの回数が多かったかです^^
答えは、③!!
目次で分かってしまったでしょうか^^;
同じ回数だけ単語に触れても、テスト回数が多い方が事後テストの正答率が高かったのです!
②の正答率が36%だったのに対し、③は81%という結果。
テストの効果ってこんなにすごいんですね♪
なので、単語を学習する際には、例えば
「benefit=利益 」
と意味を覚えようとするよりも、単語の意味を見えないようにして
「benefit=???」または「???=利益」
のようにして、自分の頭の中でテストするようにすると効率の良い語彙習得が期待できますよ♪
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<おまけ>
今回の意図的学習のポイントを踏まえて、実験で150単語を覚えてみました。
遥か昔に覚えようとして覚えきれなかった単語たち^^;
実験を始めた時には、2〜3割覚えているかなぁっていう感覚。
テスト効果を期待してぶっつけでテスト。
(学習する前にテストを行うことでも、テスト効果が得られます^^ 今回の場合、すでに学習済みでしたが)
電車に乗った時とか、暇な時に思い出しては学習とテストを繰り返す。
途中から、学習はやめてテストのみ繰り返す。
自信がない単語は、テストに正答しても念入りに覚えようとしました。
繰り返しの期間は、最初は連日でやっていたのが、飽きてそのうち1週間あけ、3週間あけるようになった。
(補足:復習の間隔を徐々にあけることは、記憶保持の効果が上がるというわけではないそうです)
学習とテストを含め、繰り返したのは多分5回くらい。
最後に復習した際には意外とポンポン意味がでてくる。
8〜9割の正答率という感覚でした♪
細々としたしっかりとした実験というよりも
ゆる〜く検証っていう感じです、正直^^;
あくまで私の感覚ですが、精神的に負荷はそこまで感じませんでした。
「繰り返す。思い出す(テストする)。時間をあける。」
のルールにさえ沿っていれば、かなり覚えやすいと感じましたよ!^^
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こちらの投稿は、下記の文献を参考にしました。
感謝申し上げます。
『英単語学習の科学』
著者:中田達也